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腕を上げたとき、服を着替えるとき、夜寝返りをうったときに肩がズキッとする。そんな状態が続くと、「動かしたほうがいいのか、安静にしたほうがいいのか」がわからず、不安になりますよね。
変形性肩関節症と言われると、「もう変形しているなら仕方ないのかな」「年齢だから付き合っていくしかないのかな」と感じてしまう方も多いと思います。
ですが、痛みの長引きやすさには、変形そのものだけでなく、毎日の肩の動かし方のくせが大きく関わっていることがあります。同じ診断でも、動かし方しだいで楽になっていく方もいれば、なかなか変わらない方もいます。
まずは「なぜ痛みが長引くのか」をやさしく整理しながら、今の動かし方を見直すヒントを探していきましょう。
変形性肩関節症とは、肩関節の骨と骨の間にあるクッション(軟骨)がすり減り、関節の表面に変化が起きている状態のことをいいます。
ここで知っておきたいのは、肩関節が体の中でいちばん大きく動く関節だという点です。腕をぐるりと回せるのは、骨どうしのはまりが浅く、自由度が高い構造になっているからです。
ただ、自由度が高いということは、その分まわりの筋肉や腱でしっかり支えてあげる必要がある、ということでもあります。たとえるなら、深くはまったお茶碗の上のボールではなく、平らなお皿の上のボールを、まわりから手で支えているようなイメージです。
だからこそ、支える筋肉のバランスが崩れたり、動かし方が偏ったりすると、特定の場所にばかり負担が集まりやすくなります。変形は「結果」のひとつであって、痛みの長引きには動かし方のほうが強く関わっていることがあるのです。
肩の痛みが長引く大きな理由は、肩を「腕の付け根だけ」で動かそうとしてしまうことにあります。
本来、腕を上げる動きは、腕の付け根の関節だけで行っているのではありません。背中にある肩甲骨が一緒にすべるように動くことで、はじめてスムーズに腕が上がります。腕の動きと肩甲骨の動きは、いわば二人三脚の関係です。
ところが、痛みをかばっているうちに肩甲骨の動きが少なくなると、足りない分を腕の付け根の関節だけで無理に補うことになります。すると、すでに負担のかかっている場所にさらに力が集中し、痛みが抜けにくくなります。
さらに、肩甲骨は背中や姿勢ともつながっています。背中が丸くなって肩が前に出た姿勢が続くと、肩甲骨が動きにくい位置で固定され、腕が上げづらくなることもあります。
つまり、痛いのは肩でも、原因の一部は肩甲骨や姿勢など別の場所にある場合がある、ということです。
「固まると困るから」と、痛みを我慢して腕を大きく振り回したり、無理に上まで上げようとする方がいます。動かすことは大切ですが、痛みを越えてまで大きく動かすのは逆効果になることがあります。
理由は、痛みが出ている関節はすでに敏感になっているからです。敏感とは、少しの刺激でも体が身構えてしまう状態のことです。そこへ無理な大きい動きを加えると、体は守ろうとして、かえってまわりの筋肉に力が入りやすくなります。
その結果、翌日に重だるさや張りが強く出たり、炎症が長引いたりすることがあります。大きく動かすことより、痛みのない範囲で正しく動かすことのほうが大切です。
①とは逆に、「動かすと痛いから」とまったく動かさずにいると、これもまた痛みを長引かせる原因になります。
関節を長く動かさないでいると、まわりの筋肉や腱が硬くなり、血流も滞りやすくなります。血流とは、体のすみずみに酸素や栄養を届ける流れのことで、これが滞ると筋肉の緊張が抜けにくい状態が続きます。
すると、本来のなめらかな動きを体が忘れていき、少し動かしただけでもこわばって痛む、という悪循環に入りやすくなります。肩がだんだん上がらなくなっていくのは、この「動かさないことによる固まり」が関わっていることもあります。
大切なのは、「動かす・休む」を極端に考えず、痛みの出ない範囲でこまめに動きを保つことです。
痛みがあると、無意識に痛い側をかばって反対の手ばかり使ってしまいます。自然な反応ですが、これが続くと痛い側の肩はますます動かなくなり、固まりが進みやすくなります。
また、「硬いから」と強く揉んだり、腕を強く引っ張ってストレッチしたりするのも注意が必要です。敏感になっている肩に強い刺激を入れすぎると、力が抜けにくくなったり、炎症をぶり返したりすることがあります。
特に変形性肩関節症では、「強い刺激=早く治る」とは言い切れません。むしろ、体が安心して動ける範囲で、少しずつ正しい動きを取り戻していくほうが、結果的に近道になることが多くあります。
変形性肩関節症の改善で大切なのは、いきなり肩を大きく動かすことではなく、動かす土台を整えてから、少しずつ動きを広げていくという順番です。
理由は、ここまで見てきたとおり、肩の痛みには肩甲骨や姿勢など全体の連動が関わっているからです。土台が動かないまま腕だけ動かそうとしても、負担の偏りは変わりにくいのです。具体的には、次のような順番で進めていきます。
⚫︎ まず姿勢を整え、肩が動きやすい位置をつくる
⚫︎ 肩甲骨が背中の上でなめらかに動く感覚を引き出す
⚫︎ 痛みの出ない小さな範囲から腕を動かしてみる
⚫︎ 体に正しい動きを覚えさせながら、少しずつ範囲を広げる
⚫︎ その日の状態に合わせて、動かす量を調整する
大切なのは、強い刺激で無理やり変えるのではなく、適切な刺激で体に本来の動きを思い出してもらう、という考え方です。「今日は整えるだけ」という日があっても、それは十分に意味のある一歩です。
こうして全体を見ながら整えていくと、痛みをその場で抑えるだけでなく、繰り返しにくい肩づくりにもつながっていきます。
変形性肩関節症は、変形があるからといって、必ずしも痛みがずっと続くと決まったわけではありません。
痛みの長引きやすさには、肩甲骨や姿勢の動き、そして毎日の肩の動かし方のくせなど、いくつもの要素が重なっています。だからこそ、痛い場所だけを見るのではなく、肩を動かす体全体を見直していくことが大切です。
これまでお伝えした「NGな動かし方」も、どれも「良くなりたい」という気持ちがあるからこそやってしまうことばかりです。だから、「やってしまっていたかも」と気づけただけでも、十分に前向きな一歩です。
まずは無理をせず、ご自身の肩がどんなふうに動いているのか、どこに負担が偏っているのかを知ることから始めてみてください。その気づきが、肩を楽にしていくきっかけになるかもしれません。




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